演題: がんモデルマウスを用いたRNAi医薬開発〜microRNAは薬になるのか〜
講師: 竹下 文隆 先生 国立がん研究センター研究所・分子細胞治療研究分野・主任研究員
日時:2013年1月21日(月)17:00~18:00
場所:生体調節研究所1階会議室
講演要旨
RNA干渉法はsmall interfering RNA (siRNA)やshort hairpin RNA発現ベクターの導入により標的遺伝子を効率よく抑制する、強力なツールとして広く研究室で利用されている。また、microRNA (miRNA)は内在性の小分子RNAであり、遺伝子の発現を調節し、発生、分化、細胞増殖、アポトーシスなどの様々な細胞機能に影響を与える。さらにmiRNAは種々のがんで発現異常が観察され、miRNAが、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の機能を有することが報告されている。siRNAやmiRNAを利用したRNAi医薬は、転移性や後期のがんなどの難治性疾患の治療法として期待されているが、RNAi医薬の臨床開発には、デリバリーシステム、off-target効果による副作用、遺伝子抑制効果に伴うRNAi機構の競合、免疫応答の誘導などの問題が障害となっている。特に安全かつ効果的に標的であるがん細胞へsiRNAやmiRNA分子を送達可能なデリバリーシステムの開発が、RNAi創薬には重要であると多くの研究者が認識しているものの、臨床試験にまで進んだデリバリー技術は非常に少なく、最近ではRNAi創薬の勢いに陰りが見えてきた感もある。しかし、一本鎖RNAによる遺伝子抑制効果や、細胞間連絡に関わるエクソソームの応用などによりデリバリーの問題を克服できる可能性も示唆されている。
本セミナーでは、我々が行っているin vivo発光イメージングを利用したがんモデルマウスによる、siRNAおよびmiRNAのデリバリー効果の評価を中心に、miRNAによる診断、RNAi創薬の可能性について概説させていただく。