エピゲノム編集の論文がNature Biotechnology誌に掲載

ねらった遺伝子のスイッチをオンにする技術を開発 -CRISPR/Casゲノム編集を応用したエピゲノム操作法-

本研究成果のポイント
○これまで、特定の遺伝子のみのスイッチを効率的にオンにすること(DNA脱メチル化)はできなかった。
○CRISPR/Casゲノム編集を応用し、ねらった遺伝子のみのスイッチを効率的にオンにする技術を開発した。
○本技術は、遺伝子のスイッチ異常により起こる疾患の治療、再生医療に利用可能。

DNAのメチル化と脱メチル化は、遺伝子の発現にかかわるスイッチ(エピゲノム)のひとつです。例えば、がんの増殖を抑える遺伝子のスイッチがオフになることで正常な細胞ががん細胞に変化することや、iPS細胞作製過程では特定の遺伝子(Oct-4)のスイッチをオンにする必要のあることが知られています。しかし、遺伝子のスイッチをオンにする従来の薬は、すべての遺伝子のスイッチ全部をオンにするものであり、オンになっては困る遺伝子までオンにしてしまうことによってひきおこされる副作用などの危険性がありました(図1)。
このたび、私どもの群馬大学生体調節研究所ゲノム科学リソース分野グループは、九州大学大学院医学研究院、国立成育医療研究センターのグループとの共同研究で、ゲノム編集法の技術を応用し、特定の遺伝子のみのスイッチを効率的にオンにする(DNA脱メチル化)技術を開発し(図2)、生体に適用させることに成功しました。この新しい技術により、抑制されていた癌抑制遺伝子をオンにするなどのエピゲノム療法や再生医療への応用が大きく広がることが期待されます。
本成果は米国の科学雑誌『Nature Biotechnology』オンライン版(米国時間8月29日付:日本時間 8月30日)に掲載されました。

     

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